素晴らしい景色と、走りごたえのあるワインディングロード。群馬県と長野県を結ぶ「碓氷峠(うすいとうげ)」は、多くのライダーが一度は走ってみたいと願う名所です。
しかし、憧れだけで飛び込むと「怖くて全然楽しめなかった」「無理をして立ちごけしてしまった」という苦い思い出になりかねません。特に、失敗や無駄な出費を嫌う堅実なあなたにとって、愛車を傷つけるリスクは絶対に避けたいはずです。
そこで今回は、バイク情報館365のライターが、碓氷峠ツーリングで絶対に後悔しないための、具体的で実践的な攻略法と注意点を解説します。184個あるカーブの走り方から、意外と知られていない駐輪場の「罠」まで、事前に知っておくべき情報を網羅しました。
これを読めば、不安を払拭し、安全かつスマートに碓氷峠の絶景を楽しめるようになりますよ。
碓氷峠(旧道)が初心者ライダーにとって「鬼門」になり得る理由
碓氷峠には、走りやすい「バイパス」と、カーブが続く「旧道(国道18号)」の2つのルートがあります。一般的にツーリングで「碓氷峠に行く」と言う場合、この「旧道」を指すことがほとんどです。
なぜ初心者が警戒すべきなのか、その最大の理由は「カーブの多さと長さ」にあります。

逃げ場のない「184個」のカーブ
碓氷峠の旧道には、片道約11kmの区間に、なんと184個ものカーブが存在します。カーブごとに番号の標識が立っており、1から始まって184までカウントされます。
教習所や近場の山道とは比較にならない回数のコーナリングを繰り返すため、ライダーには以下のような負荷がかかります。
- 集中力の低下:半分を過ぎたあたり(カーブ番号100番前後)から、精神的な疲れが出始めます。
- 左手の疲労:頻繁なギアチェンジとクラッチ操作により、握力が奪われます。
「まだ続くのか…」と心が折れかけた時に、きついカーブが現れるのが碓氷峠の恐ろしさです。

道幅の狭さとブラインドコーナー
旧道は道幅が決して広くありません。場所によっては木々が生い茂り、昼間でも薄暗い箇所があります。
さらに、先の見通しが悪い「ブラインドコーナー」が多く、対向車がセンターラインを割ってくる可能性もゼロではありません。特に紅葉シーズンなどの混雑期は、景色に見とれたドライバーが不注意な運転をしていることもあります。
【絶対に後悔しない】魔のカーブ攻略法3選
「怖い」という感情は、正しい知識があれば「慎重さ」という武器に変わります。ここでは、ベテランライダーも実践している、安全にクリアするための基本テクニックをご紹介します。

「スローイン・ファストアウト」ではなく「スローイン・スローアウト」
サーキット走行などでよく聞く「スローイン・ファストアウト(ゆっくり入って素早く脱出する)」ですが、公道、特に慣れない峠道では忘れてください。
おすすめは「スローイン・スローアウト」です。
- カーブの手前で十分に減速する:自分が「遅すぎるかな?」と思うくらいで丁度良いです。
- 一定の速度で回る:加速しようとせず、安定した速度でカーブを通過します。
- 直線が見えてから加速:カーブを完全に抜けきり、車体が真っ直ぐになってからアクセルを開けます。
無理に速く走る必要はありません。後続車が追いついてきたら、見通しの良い直線で左に寄り、道を譲りましょう。焦りは事故の元です。

視線は「ガードレール」ではなく「出口」へ
人間には「見た方向に進む」という習性があります。カーブの外側にあるガードレールや、崖下を「怖いな」と思って見つめると、不思議とバイクはそちらへ吸い寄せられてしまいます。
- 顔を向ける:目線だけでなく、顔ごとカーブの出口(行きたい方向)に向けましょう。
- 近くを見ない:前輪のすぐ手前ではなく、少し遠くを見るように意識するとバランスが取りやすくなります。

ギアは「固定」でズボラに走る
184個のカーブ全てで完璧なシフトチェンジをする必要はありません。頻繁な操作は疲労の原因になります。
多くの大型バイクや中型バイクなら、2速または3速に入れっぱなし(固定)でも十分に走れます。エンジンブレーキが効きやすく、アクセル操作だけで速度調整がしやすいため、ブレーキへの依存も減らせます。
「何速に入っているかわからない」というパニックを防ぐためにも、自分の中で「今日は3速固定でいく」と決めてしまうのも一つの手です。
立ちごけ注意!めがね橋の駐輪場は「砂利」と「傾斜」
碓氷峠のハイライトといえば、レンガ造りの重要文化財「碓氷第三橋梁(通称:めがね橋)」です。ここで記念撮影をするのが定番ですが、バイク乗りにとって最大の難関が「駐車場」です。

荒れている路面と落ち葉
以前は橋のすぐ近くに駐車できましたが、現在は少し(長野方面へ200〜300メートルほど)進んだ場所に駐車場が整備されています。
しかし、この駐車場は傾斜のある路面であることが多いです(紅葉シーズンは、落ち葉も多いです。)。
- 重いバイクは特に注意:大型バイクやハーレーなどの重量車は、落ち葉で元が滑って立ちごけするリスクが高いです。
- 頭から突っ込まない:傾斜がある場所で頭から駐車すると、バックで出られなくなります(いわゆる「ハマる」状態)。
もし現地に着いて「これは危ない」と感じたら、無理にその場に停めようとせず、安全な平地を探すか、諦めて通過する勇気も必要です。修理代という「無駄な出費」を防ぐための賢明な判断です。
季節と路面状況:落ち葉と対向車に潜むリスク
碓氷峠は標高が高いため、平地とは環境が異なります。
秋の「濡れた落ち葉」は氷と同じ
紅葉のシーズン(例年11月頃)は非常に美しいですが、路面には大量の落ち葉が積もります。特に、朝露や雨上がりで濡れた落ち葉は、氷の上と同じくらい滑ります。
カーブの途中、日陰になっている部分に落ち葉溜まりがあることがよくあります。絶対にその上で急ブレーキや急ハンドルをしてはいけません。車体を傾けず、そっと通過してください。

観光客の飛び出し
めがね橋周辺や、軽井沢側の入り口付近は、多くの観光客やハイカーが歩いています。景色に夢中になって、道路にはみ出してくる人もいます。
「ここは観光地である」という認識を持ち、いつでも止まれる速度で走行しましょう。
ルート選択の正解:行きは「旧道」、帰りは「バイパス」
最後に、体力と集中力を考慮したおすすめのルートプランをご提案します。
- 行き(上り):旧道(国道18号)
- 体力があるうちにカーブを楽しむ。
- 上り坂なのでスピードが出すぎず、安全にコントロールしやすい。
- めがね橋に立ち寄れる。
- 帰り(下り):碓氷バイパス
- 道幅が広く、カーブが緩やか。
- 疲れた体でも安全に帰れる。
- 下りの旧道はスピードが乗りやすく、ブレーキへの負担が大きいため初心者には推奨しません。
この「上り旧道・下りバイパス」の組み合わせが、最もリスクが低く、かつツーリングの満足度が高い黄金ルートです。

碓氷峠は、決して「攻める」場所ではなく、歴史と自然を「感じる」場所です。
「無事に家に帰り着くこと」こそが、ツーリングにおける唯一の正解であり、最もかっこいいライダーの姿です。
今回の攻略法を頭の片隅に入れて、ぜひ安全で楽しい碓氷峠ツーリングを実現してください。
