週末の貴重な自由時間。せっかく大型バイクを出してツーリングに行くなら、ただ走るだけでなく「行ってよかった」と心から思える充実感が欲しいものです。
しかし、行き当たりばったりの計画では、渋滞に巻き込まれたり、期待外れの食事で損をした気分になったりと、後悔のリスクがつきまといます。そこで今回は、群馬県が誇る「上毛三山(赤城・榛名・妙義)」に加え、歴史ある「碓氷峠」までを効率よく巡る、大人のための欲張りルートをご提案します。
走りごたえのあるワインディング、失敗しないグルメスポット、そして家族への言い訳(お土産)までもしっかりカバー。体力や時間配分、大型バイクならではの駐車場の懸念点など、オーナー視点で「無駄」と「失敗」を徹底的に排除したプランです。これさえ読めば、次のツーリング計画は完成です。
なぜこの4つ「上毛三山+碓氷峠」を巡るのか
群馬県が誇る名峰、赤城山、榛名山、妙義山。これら「上毛三山」をバイクで駆け抜けることは、関東のライダーにとって一種のステータスであり、憧れでもあります。しかし、せっかくの休日、限られた時間と予算を使って群馬まで足を運ぶのであれば、もう一つの名所「碓氷峠」を見過ごす手はありません。

30代後半から50代、仕事に責任を持ち、家庭では良き夫・父であることを求められる私たちにとって、ソロツーリングは貴重な自由時間です。だからこそ「行ってよかった」と心から思える、無駄のない、そして安全で充実したプランが必要です。

限られた時間で効率よく、かつ「走りごたえ」と「絶景」、そして家族への「お土産」まで網羅した、大人のための群馬峠三昧ルートをご提案します。カタログスペック上の楽しさではなく、実際の道路状況や疲労度、駐車場の環境など、大型バイクを所有するオーナー視点での「失敗しない」ための情報を盛り込みました。
効率重視のモデルコース概要
今回のルートは、群馬県の東から西へと流れるように移動するプランです。逆回りは夕方の高崎・前橋市街地の渋滞に巻き込まれるリスクが高まるため、東側(赤城)からのスタートを推奨します。
- 関越自動車道・赤城IC:旅のスタート
- 赤城山:大沼と赤城神社で安全祈願
- 榛名山:伊香保温泉街を抜け、榛名湖へ
- ランチ:水沢うどん街道で確かな味を堪能
- 妙義山:奇岩の絶景と道の駅みょうぎ
- 碓氷峠(旧道):184のカーブとめがね橋
- 上信越自動車道・松井田妙義IC:帰路へ
このルートの総走行距離は、インターチェンジ間でおよそ150km程度(高速道路を除く)となります。休憩を含めて約6〜7時間を想定してください。朝8時か9時に現地をスタートできれば、夕方前には帰路につける計算です。
赤城山:大人の走りを堪能する県道4号線
まずは赤城山を目指します。赤城インターを降りてからのアプローチはいくつかありますが、メインとなるのは県道4号線(赤城道路)です。
この道は道幅が広く、路面状況も比較的良好です。大型バイクのパワーを持て余すことなく、気持ちよくアクセルを開けられる区間が多いのが特徴です。タイトなコーナーが続くというよりは、中高速コーナーをリズムよく繋いでいくようなレイアウトです。リターンライダーの方や、大型バイクの取り回しに少し不安がある方でも、恐怖感なく楽しめるでしょう。

頂上にある「大沼(おの)」は、標高1,300mを超え、夏場でもひんやりとした空気が漂います。ここで必ず立ち寄りたいのが「赤城神社」です。湖畔に浮かぶように鎮座する赤い社殿は美しく、朱塗りの橋(啄木鳥橋)とバイクを写真に収めれば、SNS映えはもちろん、自身の思い出としても最高の画になります。

ここでしっかりと「交通安全」のお守りを手に入れるのも良いでしょう。家族に対して「安全第一で走ってきた」という証拠にもなりますし、自分自身への戒めにもなります。
榛名山:観光と走りのバランス
赤城山を西側へ下り、昭和村や渋川市の市街地を抜けて榛名山へ向かいます。この移動区間が少し混雑する可能性がありますが、焦らず流れに乗りましょう。
榛名山へのアプローチで最もメジャーなのは、伊香保温泉街を経由するルートです。温泉情緒あふれる街並みは魅力的ですが、道幅が狭く、観光バスや歩行者も多いため、ここでは「観光地の雰囲気を感じつつ、慎重に通過する」ことに徹してください。

温泉街を抜けると、本格的なワインディングが始まります。ここは漫画『頭文字D』の舞台としても有名ですが、私たち大人のライダーは、公道でのバトルではなく、マシンの挙動を確かめながらラインをトレースする楽しみ方をすべきです。路面には減速帯(縦溝や凸凹)が設置されている箇所があるため、サスペンションの動きに注意を払ってください。
榛名湖へ続く直線道路「榛名湖メロディライン」からは、榛名富士の美しい姿が望めます。ここは視界が開けており、非常に気持ちの良いクルージングが楽しめます。
失敗しないランチ選び:水沢うどん
榛名山を下る際、あるいは榛名へ向かう途中の昼食として強くおすすめしたいのが「水沢うどん」です。日本三大うどんの一つに数えられる水沢うどんは、コシが強く、のど越しが良いのが特徴です。
なぜここをおすすめするかというと、理由は二つあります。一つは「味の保証」です。歴史ある名店が立ち並んでおり、どこに入っても外れがありません。「せっかくのツーリングなのに昼食で失敗した」という後悔を避けることができます。
もう一つは「駐車場の広さ」です。水沢うどん街道の多くの店舗は、観光バスも受け入れる広い舗装された駐車場を完備しています。砂利の駐車場で足元を気にしながら大型バイクを停めるストレスから解放されるのは、精神的な余裕に繋がります。「大澤屋」や「田丸屋」といった老舗を選べば間違いありません。
妙義山:荒々しい景観に圧倒される
榛名山から南西へ移動し、妙義山へ。ここは上毛三山の中でも特に異彩を放つ存在です。ゴツゴツとした奇岩が空に突き刺さるような景観は、日本の山とは思えないほどの迫力があります。

妙義山のルートは、全体的に道幅が狭く、カーブも回り込むような深いものが多い傾向にあります。路面には落ち葉や砂が浮いていることもあるため、スピードよりもコントロールを重視して走る必要があります。
休憩ポイントとしては「道の駅 みょうぎ」が最適です。ここからは妙義山の荒々しい岩肌をバックに愛車の写真を撮ることができます。自動販売機やトイレも整備されているので、ここまでの疲れを一度リセットしましょう。妙義山は走るというよりも、その景色に圧倒されながら、大自然の中を通過させていただく、といった謙虚な気持ちで挑むのが正解です。
碓氷峠(旧道):歴史と184のカーブ
最後は、妙義山からほど近い碓氷峠へ向かいます。上信越自動車道や碓氷バイパスを使えば長野県軽井沢まですぐですが、あえて「旧道(国道18号旧道)」を選びます。
ここには「カーブ1」から始まり、長野県境の「カーブ184」まで、番号が振られたカーブ標識が設置されています。一つ一つのコーナーをクリアしていく達成感は、他の峠では味わえないものです。

碓氷第三橋梁(めがね橋)
旧道のハイライトは、レンガ造りのアーチ橋「めがね橋」です。明治時代に建設された鉄道遺産で、国の重要文化財にも指定されています。新緑の季節や紅葉の時期には、レンガの赤茶色が背景に映え、息をのむ美しさです。

注意点として、めがね橋の駐車場は橋から300メートルほど離れた場所にあります。大型バイクの場合、橋の真下に路駐するのは交通の妨げになり危険ですので、必ず指定の駐車場を利用してください。少し歩くことになりますが、その価値は十分にあります。
お土産は「峠の釜めし」で決まり
碓氷峠の麓、横川にある「おぎのや」本店、または横川店に立ち寄りましょう。ここの「峠の釜めし」は、絶対に外せないお土産です。

益子焼の土釜に入った炊き込みご飯は、見た目のインパクトも味も一級品です。自宅で待つ奥様やお子様へのお土産としてこれ以上のものはありません。「自分だけ楽しんできた」という後ろめたさを払拭し、「家族のことも考えていた」という事実を行動で示すことができます。重たい釜を持って帰るのは大変かもしれませんが、トップケースやサイドパニアにしっかりと固定して持ち帰りましょう。その重みは、家庭円満のための必要経費です。
「後悔しない」ための失敗回避テクニック
最後に、このルートを快適に走破し、後悔しないためのポイントをまとめます。

気温差への備え
山間部の標高は1,000mを超えます。平地では快適でも、山上では10度近く気温が下がることがあります。特に春先や秋口は、冬用ジャケットやインナーダウンを持っていくのが賢明です。「寒くて震えながら走る」ことほど、惨めで集中力を削ぐものはありません。
ガソリンスタンドの計画
山に入るとガソリンスタンドは極端に少なくなります。特に日曜・祝日は休業している店舗も多いです。渋川市や高崎市の市街地を通る際に、早めの給油を心がけてください。「まだ大丈夫」という過信が、山中でのガス欠という最悪の事態を招きます。
ドラレコと任意保険
万が一のトラブルに備え、ドライブレコーダーの装着は強く推奨します。自分自身の潔白を証明するためだけでなく、あおり運転等の被害に遭った際の証拠となります。また、ロードサービスが付帯した任意保険への加入状況も、出発前に再確認しておきましょう。大人の趣味において「備え」は心の余裕に直結します。
まとめ
赤城、榛名、妙義、そして碓氷峠。これらを一日で巡る旅は、群馬の自然と走りの魅力を凝縮した贅沢なプランです。しかし、無理は禁物です。天候や自身の体調によっては、妙義や碓氷を次回の楽しみに取っておく勇気も必要です。

安全に家に帰り、お土産の釜めしを囲みながら、今日のツーリングの話をする。そこまでが「大人のバイクライフ」です。次の週末、愛車と共に上州の風を感じに出かけてみてはいかがでしょうか。
