「念願の大型バイクを手に入れた。週末はツーリングに行きたいけれど、立ちごけして傷をつけるのだけは絶対に避けたい」
そう考えているあなたへ。群馬と長野の県境にある「碓氷峠(うすいとうげ)」は、ツーリングのメッカとして知られていますが、実はルート選びを間違えると、初心者にとっては冷や汗をかく過酷な道になりかねません。
カーブが184個もあるテクニカルな「旧道」を選ぶべきか、それとも大型トラックが行き交う高速区間の「バイパス」を選ぶべきか。それぞれのルートには、カタログスペックには載っていない「リアルなリスク」と「得られる満足感」の違いがあります。
この記事では、慎重派のライダーのために、実際の路面状況や駐車場の注意点まで含めて、論理的にどちらのルートが「正解」なのかを比較・解説します。後悔のないツーリングプランを立てるための判断材料として、ぜひお役立てください。
結論:初心者が「後悔しない」のはどっち?
結論から申し上げますと、大型バイクに乗る初心者が「立ちごけのリスク」や「精神的な疲れ」を最小限に抑えたいなら、「バイパス」を選ぶのが論理的な正解です。

しかし、せっかくのツーリングで「満足感」や「思い出」を得たいのであれば、条件付きで「旧道」をおすすめします。
碓氷峠における「失敗」とは、「無理をして怖い思いをする」ことや、「単調すぎてつまらなかった」と後悔することです。ご自身のバイクの特性と、その日のコンディションに合わせて選ぶことが、賢い大人の選択です。どちらが今のあなたに合っているか、具体的な判断基準を解説します。
碓氷峠「旧道」と「バイパス」の決定的な違い
まずは、この2つのルートがどのように違うのか、バイク乗りの視点でスペックを比較してみましょう。
| 項目 | 旧道(国道18号旧道) | バイパス(国道18号バイパス) |
|---|---|---|
| カーブの数 | 184個(大小さまざま) | 少ない(緩やかで大きなカーブ) |
| 道幅 | 片側1車線だが狭い箇所あり | 片側1車線(登坂車線あり)で広い |
| 路面状況 | 落ち葉や苔があることも | 整備されており非常に良好 |
| 交通量 | 観光客中心(休日は多い) | トラック・物流中心(流れが速い) |
| 難易度 | 中〜上級(低速コントロール必須) | 初級(高速巡航ができればOK) |
| 主な目的 | 観光・ワインディングを楽しむ | 移動時間を短縮する・安全移動 |
この表を見ると、バイパスの方が圧倒的に「安全・快適」に見えます。しかし、旧道にはバイパスにはない「バイクを操る楽しさ」があるのも事実です。それぞれの詳細を深掘りしていきましょう。
【旧道】(国道18号旧道)のメリット・デメリット
「頭文字D」の舞台としても有名な旧道ですが、大型バイク初心者にとっては、憧れと同時にリスクも潜むルートです。

184個のカーブは大型バイクには「苦行」か「快感」か
旧道の最大の特徴は、なんといっても「184個」あるカーブです。
カーブには一つひとつ番号の看板が立っており、これをカウントしながら走るのは風情があります。しかし、重量級の大型バイクや、取り回しに不安があるリターンライダーにとっては、以下の点が「苦行」になる可能性があります。
- 低速ヘアピンの連続:
大柄なクルーザー(ハーレーなど)の場合、急なヘアピンカーブではステップを擦りやすく、細かな半クラッチ操作が求められます。 - 路面の落ち葉:
木々がトンネルのように覆い被さっているため、秋の紅葉シーズンはもちろん、夏場でも湿った落ち葉や苔が路肩に溜まっていることがあります。踏むと一瞬でスリップするため、常に路面状況に気を配る必要があります。
一方で、平均勾配は4%ほどと比較的緩やかです。「スピードを出さずに、トコトコと景色を楽しみながら流す」という走り方ができるなら、木漏れ日の中を走る最高のツーリングルートになります。

めがね橋などの観光スポットと駐車場の注意点
旧道のハイライトといえば、レンガ造りのアーチ橋「めがね橋(碓氷第三橋梁)」です。ここでの写真撮影は、所有欲を満たす最高の瞬間ですが、駐車には最大の注意が必要です。
- 駐車スペースの傾斜:
めがね橋付近の駐車スペースは、場所によって微妙な傾斜や砂利が浮いていることがあります。重量車で不用意に停めると、出発時にバックができなくなったり、サイドスタンドがめり込んで立ちごけしたりするリスクがあります。 - 観光客の多さ:
休日は観光客の車や歩行者が多く、予期せぬ飛び出しにも注意が必要です。

「かっこいい写真を撮りたい」という欲求よりも、「安全に停められる場所があるか」を現地で冷静に判断し、無理ならスルーする勇気を持つことが、損をしないコツです。
【バイパス】(国道18号バイパス)のメリット・デメリット
一方、バイパスは「移動」に特化した道路です。リスクを極限まで減らしたい方には最適ですが、別の種類の緊張感があります。

流れが速い?トラックが多い?リアルな交通事情
バイパスは道幅が広く、舗装も綺麗で非常に走りやすいです。しかし、物流の大動脈であるため、大型トラックの交通量が非常に多いです。
- スピードレンジが高い:
全体的に車の流れが速く、カーブも高速で抜けていく必要があります。自分のペースでゆっくり走っていると、後続車に煽られているようなプレッシャーを感じるかもしれません。 - トンネルの圧迫感:
入山峠付近など、長いトンネルがあります。暗いトンネル内で大型トラックと並走するのは、初心者にとっては恐怖を感じる瞬間でもあります。
圧倒的な「楽さ」と引き換えになるもの
バイパスの最大のメリットは「楽」であること。旧道で1時間近くかかる道のりを、バイパスならあっという間に抜けられます。クラッチ操作で左手が腱鞘炎になる心配もありません。
ただし、「ツーリングに来た!」という情緒は少なめです。単なる「移動」になってしまうため、「せっかく遠出したのに、高速道路と変わらない景色だった」という、ある種の「損をした気分」になる可能性は否定できません。
失敗しないための「賢いルートプラン」
では、後悔しないためにはどう走ればよいのでしょうか。おすすめのプランを提案します。
プランA:【行き(上り)】は旧道 → 【帰り(下り)】はバイパス
これが最も「論理的で安全」なおすすめルートです。
- 理由1:上りはバイクが安定する
バイクは構造上、下り坂よりも上り坂の方がリアタイヤに荷重がかかりやすく、アクセルを開けている時の方が安定します。低速カーブも、上りの方が恐怖心が少なくクリアできます。 - 理由2:帰りの体力温存
ツーリングの後半、疲れて集中力が切れた状態で、184個のカーブを下るのはリスクが高いです。帰りはバイパスを使って、安全・快適に山を降りるのが効率的です。

プランB:雨上がりや落ち葉の季節は「往復バイパス」
前日に雨が降った場合や、晩秋の落ち葉が多い時期は、迷わず旧道を捨ててください。
濡れた落ち葉に乗って転倒し、修理費数十万円の出費になることこそ、最大の「無駄遣い」です。景色は諦めて、安全を買いましょう。
ツーリングの満足度を上げる「立ち寄りスポット」
ルート選びと同じくらい重要なのが、休憩スポットです。奥様の理解を得るためにも、お土産選びは重要ですし、何より自分自身が「ここに来てよかった」と思える体験が必要です。
峠の釜めし本舗 おぎのや 横川店
旧道の入り口手前にある、あまりにも有名なスポットです。
「ベタすぎる」と思うかもしれませんが、広い駐車場(二輪専用スペースあり)があり、高級バイクでも安心して停められます。
温かい釜めしを食べる体験は、冷えた体に染み渡りますし、空き容器を持ち帰れば奥様へのお土産話のネタにもなります(※ただし容器は重いので、お土産用には別途購入がおすすめ)。
碓氷湖(坂本ダム)
旧道の途中にある美しい湖です。めがね橋ほど混雑しておらず、駐車場も比較的平坦で広いため、初心者でも安心して休憩できます。湖畔に愛車を停めて、静かな時間を過ごすのは、大人の余裕を感じさせる贅沢な時間です。
まとめ:愛車を守りながら楽しむために
碓氷峠は、選び方次第で「最高の思い出」にも「苦い記憶」にもなります。
- 旧道:バイクを操る楽しさと絶景があるが、体力と低速テクニックが必要。「上り」で使うのが正解。
- バイパス:移動効率と安全性は高いが、情緒は薄い。「下り」や「悪天候後」に使うのが正解。
「かっこいいライダー」とは、難しい道を攻める人ではなく、「自分の技量と状況を冷静に判断し、無事に家に帰る人」のことです。
ご自身の愛車を大切にし、無駄な修理費や怪我のリスクを負わないよう、賢いルート選択で碓氷峠ツーリングを楽しんでください。
